■はじめに
私たちの暮らす日本は、四方を海に囲まれた水と緑溢れる国家であり、悠久の歴史、四季の移ろいと共に、独自の文化、国民性を育み、国際社会の中で経済大国としての地位を確かなものとしました。経済成長を優先しすぎたことに加え、戦前にあった家長制度や、道徳教育に対しても否定的な教育が長く続けられてきたことにより、現代を生きる私たちは、先達が有していた気概や、精神的な強さを失いつつあります。人間関係の絆は薄れ、人として美しく生きるということを忘れてしまった気がしてなりません。また、混迷を極める国際社会の中で、平和と安定に対する責任ある貢献を果たせているか疑問が残ります。地域に目を向ければ過疎化、地域間格差は急速に進んでおり、地方行政にも問題は山積しております。今こそ我々が責任世代として、曇りなき心の月を先立てて、英知と勇気と情熱をもって、「温もりある真(まこと)の民主主義国家」「成熟した輝く地域」を確立する必要があるのです。
■温もりある真(まこと)の民主主義国家の確立
私が考える「温もりある真(まこと)の民主主義国家」とは、国民が安心して暮らせる、努力が報われる、互いが助け合える国家です。世界から尊敬される日本であるためにも、我が国のあるべき姿を議論し、国の骨格を構築していかなければなりません。そのために、思いやり溢れるひとによる「温もりある真(まこと)の民主主義国家」確立へ向けての運動に取り組みます。
1)思いやり溢れるひとづくり
社会は人がつくりあげるものです。人の成長が社会の発展につながることは明白であります。人格形成において基礎となる教育を再生していくことが、我が国の明るい未来に繋がると私は考えます。親や大人が子どもたちに「躾」を通して育てるのは当然のことであり責任・義務を持つべきです。学校だけでなく社会全体が教育の現場であり、私たち大人がまずは手本となることが重要です。
成立から60年を経て初めて改正された新教育基本法には、愛国心、道徳心の尊重など日本人が忘れかけていた教育理念がはっきりと明記されました。私たちがその意義を十分に理解し、先達を敬い、伝統と文化を尊重できるひとづくりのために、教育勅語の徳目の復権を呼び掛けていきます。教育勅語には、道徳項目が主に12個示され、12の徳目と呼びます。
(参考資料 和辻哲郎著『人間の学としての倫理学』岩波書店)
12の徳目
- 親に孝養をつくしましょう(孝行)
- 兄弟・姉妹は仲良くしましょう(友愛)
- 夫婦はいつも仲むつまじくしましょう(夫婦の和)
- 友だちはお互いに信じあって付き合いましょう(朋友の信)
- 自分の言動をつつしみましょう(謙遜)
- 広く全ての人に愛の手をさしのべましょう(博愛)
- 勉学に励み職業を身につけましょう(修業習学)
- 知識を養い才能を伸ばしましょう(知能啓発)
- 人格の向上につとめましょう(徳器成就)
- 広く世の人々や社会のためになる仕事に励みましょう(公益世務)
- 法律や規則を守り社会の秩序に従いましょう(遵法)
- 正しい勇気をもって国のため真心を尽くしましょう(義勇)
このように人として当たり前の道を説いております。教育勅語の復権というと拒否反応を示す方が多いのも事実ですが、子どもたちが「日本に生まれてよかった」と誇りに思えるような教育を取り戻せるように尽力することが、私たちの務めです。責任世代として運動を推進し、運動を通して思いやり溢れるひとづくりに取り組みます。
教育を再生する前に私たち自身の意識変革も重要です。この年になって恥ずかしながら家族について考えるようになりました。厳しくもやさしく男の生き様を背中で教えてくれた父親。深い愛情で包み込むように育ててくれた母親。産んでくれてありがとう、育ててくれてありがとうと心底感謝できるようになりました。
周りにいる友人、社員に対する感謝の気持ちも自然な形で湧いてくるようになり、みんなの幸せを願い、生き方を見つめ直す勇気をやっと持てたといえます。私も大人としてしっかりと責任を果たします。
私たちの先達は、日本という国家とその歴史や伝統、文化、さらに日本人が有する精神性を戦前まで守り伝えてきました。この原動力は、日本人としての誇りであり、国を守り後世に伝えなければならないという高い志であったに違いありません。グローバル化が加速する中、「温もりある真(まこと)の民主主義国家」を確立するためには、身を挺して未来を切り拓く「平成の志士」の存在が不可欠であり、私たち一人ひとりが、志を高く持ち、問題を次の世代に先送りすることなく解決するという気概を持たねばなりません。「青志塾」の開催を通して、先達が守り伝えてくれた日本の価値に誇りを持ち、志を取り戻し、運動に邁進します。
世のため人のために生きるという、思いやり溢れる国民を育むことが「温もりある真(まこと)の民主主義国家」の確立に繋がると確信します。
2)「温もりある真(まこと)の民主主義国家」確立へ向けての運動
「温もりある真(まこと)の民主主義国家」を確立するためには、日本の骨格を作る運動が重要です。
一点目は憲法問題に関する運動です。2008年は国民投票法が成立した後、現行の憲法が施行されて以来、60余年を経過して初めて憲法改正に関する空白が解消され、それを踏まえ護憲・改憲に捉われない憲法議論の国民的喚起を促し、2009年度は全国一斉タウンミーティングを開催し、大きな一歩を踏み出しました。今後は、その根本といえる自分たちの憲法を自分たちで考え、創るという国民意識の醸成が必要となっていきます。自主憲法制定については、前文に国の骨格としての日本らしさを記述してしかるべきです。その上で、国際社会の中で日本が世界平和を実現していく、という姿勢を示すべく、自主憲法制定に向けて、前向きに論じていきたいと考えます。さらに、憲法の本質を見極めるためにも、護憲・改憲を問わず議論を交わし、国民一人ひとりが憲法はどうあるべきかを関心と責任を持って考えていくために、8ブロック協議会における国民参加型タウンミーティングの開催を支援し、地区協議会としては対象者ごとにワークショップを開催するなど、今までの手法を更に進化させ浸透を図り、国民参加の運動を起こしていきます。
二点目に環境問題に関する運動です。社会では温室効果ガス削減に向けた取り組みが進んでいます。数年前から「環境」に対する取り組みが強化され、確実に運動の輪が広がっております。日本人は、豊かな自然の恵みへの感謝とともに、その脅威に対する畏怖の念を抱き、さまざまなものの中に「神」を見出し崇拝してきました。自然を敬い大切にする日本人の生き方には、自然と共生する考え方が根付いています。「温もりある真(まこと)の民主主義国家」として日本は、世界の先陣を切って、持続可能な社会を実現するべく、国家目標として自然との共生を掲げ、政策として取り組み実践することが求められます。さらに、こうした新しい社会モデルを世界に拡げることにより、地球環境に対する負荷軽減を国際社会全体の取り組みへと発展させることができる国である、と私は確信します。
データの収集、検証、有識者との意見交換などを通して、責任世代として未来のために運動を推進し、「温もりある真(まこと)の民主主義国家」の確立へ繋げます。
■成熟した輝く地域の確立
日本が元気を取り戻すには、活力ある「成熟した輝く地域」の確立が何より重要です。私の考える「成熟した輝く地域」とは、国民が幸せを実感でき、市民が地域発展の明確なビジョンのもとに市民と行政が協働し創り上げていく地域社会です。地域独自の伝統文化を継承し、祖先崇拝の心や郷土愛の涵養を図り、家族や地域の絆の再生につなげるべきと考えます。そのために「コミュニティーの再生」「市民討議会開催の推進」「徳高い企業経営」を柱に運動を推進します。
1)コミュニティーの再生
「成熟した輝く地域」の確立には、家族の絆に加え、地域のつながりを取り戻すための、コミュニティーの再生が必要です。かつての日本には、「結い」と呼ばれる、農作業などにおいて近隣で協力し合う相互扶助の精神が見られ、現代においても、この精神を取り戻すことが求められています。地域の絆、社会の絆を回復し、人と人とのつながりを感じられる共同体があってはじめて、地域は繁栄すると私は考えます。
量的な拡大の追求による、これまでの地域発展戦略は行き詰まりつつあり、成長から成熟へ、と価値観を転換していくことが必要であります。地域資源を生かし、人材を育成し、交流を図ることで地域が発展する「地域力」と、市民一人一人が街を想い行動に移す力である「市民力」が今後の地域確立のために重要と考えます。具体的には、自然との共生、コミュニティーの再生をキーワードに持続可能な循環型社会を実現し、成長一辺倒の量的拡大型社会から、質的充実を目指す成熟モデルを構築することで、地域の発展に寄与するべく、8ブロック協議会との情報交換、学ぶ機会を通して地域のあるべき姿を議論する場を設けます。
2)市民討議会開催の推進
中央集権型の行政を改め、地方分権型の社会へと変化しています。これらの動きに対して、各市町村では地域独自の行政のあり方が問われ、地域に適した自治の構築が必要となってきます。また住民参画の意味からも、無関心層やサイレントマジョリティーといった多くの住民を巻き込み、地域社会に対する住民意識が高まることも重要であります。参加者の地域社会に対する参画意識が高まり、行政と協働することで、地域独自の自治の構築が徐々に行われ、最終的には地域主権型の社会の実現につながります。そういった背景から、関東各地で「市民討議会」の開催が広がりを見せており、市民と行政が協働で問題解決に向けた事業を開催するといった成果も多々あらわれてきております。一方で政策の実現にどうつなげていくのか、議会との連携はどうするのかといった今後の課題も見えてきております。関東地区協議会としても、市民と行政との協働意識が高まっていく中で、今後の発展のためにはどうしたら良いか、検証を含め議論を深めていきたいと考えます。過去の事例の検証、講師の派遣、協力団体との連携などを通して開催される会員会議所の支援に、ブロック協議会とともに全力を注ぎます。さらに市民討議会の可能性を日本JCと連携し日本全国に伝播します。
3)徳高い企業経営
私たちは青年経済人として、地域経済の一翼を担う存在でもあります。この厳しい環境下にあって、理想ともいえる企業倫理観・顧客満足・社員満足・社会貢献・利益を同時に実現することは並大抵のことではありません。今こそ企業の真の価値観が問われますし、成長の機会と捉えることもできます。私は、「徳高い企業経営」とは理念を明確にし、地域発展に貢献し、地域に豊かさと幸せをもたらす経営であると考えます。徳高い企業経営を実現するために、年間を通したプログラム、セミナーを通じてこれからの経営と地域との関わりについてしっかりと学ぶ研修事業を通してインパクトを与えます。また「地域経営」の視点をLOMサービス等を通じ伝播し、輝く地域の確立に繋げます。
私の生まれ育った茨城の学問に「彰往考来(しょうおうこうらい)」という思想があります。
『過去を彰かにして、未来を考える』
先がまったく予想できない時代だからこそ、歴史を紐解き、未来を考えていかなければなりません。経営にも同じことがいえます。
『おだやかな海では、たくましい船乗りは育たない』尊敬する先輩の教えです。
たくましく成長していく機会を得られたと考え、しっかりと学び、実践していくことで「成熟した輝く地域」の確立に繋げます。
■関東地区協議会の役割
日本の青年会議所運動におけるガバナンスを確立する上で、関東地区協議会の役割を明確にし、3つを軸に地区協議会を牽引します。
1)運動体としての機能
日本の青年会議所は、国家青年会議所(NOM)と各地会員会議所(LOM)の2つの運動体によって構成されています。地区協議会、ブロック協議会はNOMとLOMを結ぶ情報経路です。しかし情報経路の役割だけでなく、中央省庁が集中する首都東京を抱える地域である背景からクオリティーの高い、関東地区協議会ならではの運動を8ブロック、159LOMとともに発信をしていきます。情報配信、意見の集約に力を注ぎ、機能的かつ効率的な組織連携を構築し、本会、他地区協議会、ブロック協議会、他団体との連携を意識し運動を推進します。
2)支援体としての機能
青年会議所運動の源は、地域に根差したLOMの運動、事業であると私は考えます。公益法人制度改革に伴い、青年会議所運動もさらに事業に磨きをかけて、「明るい豊かな社会を築き上げる」という理念を達成するためにもネットワークと具体的な施策を持って動くことが求められています。そのために、地区協議会として責任の重要性を理解し、運動に取り組むと共に、LOMが最高のパフォーマンスを発揮できるようブロック協議会を通じて支援します。またブロック協議会の支援として2010年度は「国民参加型憲法タウンミーティング」と「アカデミー事業」の開催を支援します。
2010年度全国会員大会は神奈川、小田原の地で開催されます。関東地区内での開催は2004年度水戸大会以来の開催です。全国会員大会を「報徳精神」宿る小田原の地で開催できることは地区協議会としても無上の喜びであり、関東地区協議会をあげて「おもてなしの心」を持って全国から集まってくる同志と貴重な時間を共有します。全国会員大会小田原大会への参画意欲と大会に対する想いを一層高めるために、地区協議会としても8ブロック協議会とともに、スケールメリットを活かし支援します。
3)交流体としての機能
LOMやブロックの情報や、魅力を発信するウェブ上での情報交換はもちろんのこと159のネットワークを通して事業の構築や問題点を共有できることは、地区協議会のスケールメリットです。159の絆のもと問題意識と関東から日本を変えるという気概を持って運動を推進します。
さらに、大地震などの自然災害に対し、互いに協力し合う関東地区災害支援ネットワーク(KADSネット)の周知を推し進めます。また民間初の救援相互協定の策定に取り組むブロック協議会を支援するとともに、現実に即したシステムを確立するために、8ブロック159LOMの皆様のご協力の下、災害シミュレーションを行い、8ブロック間の連携に関する情報交換を目的とした検証の場を設けます。そして、災害の際には、関東地区が一丸となり、迅速かつ的確に取り組める危機管理体制の確立に繋げます。
交流も協議会の大きな役割です。「人生に偶然はない。」私の持論の一つです。この関東の地で縁あって人が出会い、ともに手を取りあい運動を推進しております。友情を育むことも協議会の大きな役割と考えますので、交流事業にも積極的に取り組み、第58回関東地区大会土浦大会でさらに絆を深め、「関東はひとつ」を合言葉に会員の結束をより強固のものにして、小田原での全国会員大会に臨みます。
■結びに
関東地区協議会会長は本会の地区担当常任理事も務めることになります。関東地区の意見を代表して述べるわけですから、役割の大きさと責任の重さを理解し、自覚を持って職責を全うさせていただきます。また地区担当常任理事同士、連携を深めるとともに、日本全国の会員の皆様に全国会員大会開催地区の気概をお伝えし、関東地区から日本をひとつにまとめていきます。
「愛の反対は無関心」といわれます。私は、愛こそが今の社会に一番必要なことではないかと声を大にして伝えたいのです。
もしかしたら目を覆うような、耳を疑うような事件も、愛に溢れる社会であったら起きなかったかもしれません。他人に無関心、コミュニケーション不足の世の中では人間として寂しい気がします。
信じること
感謝すること
そばにいること
抱きしめること
握手すること
叱ること
さまざまな愛があります。家族に対する愛情はもちろんですが、郷土愛、LOMを愛する気持ち、愛社精神、多くの愛に支えられ生きています。愛と勇気が変革の原動力です。愛する国家、愛する地域、愛する家族のために、全力で命を燃やしましょう。
私は青年会議所の組織、運動に強い可能性を感じています。我々が「平成の志士」として運動を推進し、うねりを巻き起こすことで日本は必ずよみがえることができます。
おおらかに笑顔で、青年らしく、青くさく、泥くさく、理想を語りながら「愛溢れる関東地区」をともに築き上げましょう。
勇往邁進
困難をものともせずひたすら突き進もう
目標に向かって勇ましく前進しよう
青年としての英知と勇気と情熱をもって
志をたてよう 愛する国家 愛する地域 愛する家族のために
2010年度関東地区協議会会長として、「温もりある真(まこと)の民主主義国家」「成熟した輝く地域」を確立するために、皆様とともに全力で邁進することを誓います。